もみ殻を燃やすな? 地元民・移住者の間の見えない壁が融けるのを自治会長会議で目撃した

稲刈りが終わってしばらくすると、もみ殻が燃やされ、田園風景がうっすら霧がかったように白くなることがあります。 写真は、燃やす前のもみ殻。

今年度のはじめの

自治会長会議で、そのことについて問題視する会長さんが一人いました。 

「空気が綺麗だと思って移住してきたのに、ものすごい匂い! 具合が悪くなる。 

燃え尽きるまで見張っているわけでもない。危ない! もみ殻を燃やす以外に、すき込むなど別の方法も可能なはずだ」

という主張です。 一瞬、場の空気が止まりました。 

その場にいた他の13人の自治会長のうち、実際に農家の方が少なくとも2人、親戚が農家という方は13人全員だったかもしれません。(私も、夫側の本家が静岡県で農家。専業農家の難しさを目の当たりにしている)。 何しろ田んぼが身近な地域です。

 稲刈り後にもみ殻を燃す…なんてこの地域では普通のことについて、東京中心地から町の新興地に移住して来て数年で会長になったという人が批判をしたのです。 

「ここ田舎に来たら普通のことだよ? 田舎暮らしっていうのは、それも含めての話なんだ。」

と言う会長さんもいれば、かなり面喰いながらも、

「移住してくる人達の中には、そういう考えの人達もいると分かりました。」

と冷静に理解を示しつつ、実際に稲作業に携わる者として、燃やさないもみ殻の処理の難しさを説く会長さんもいました。

我が子達も、田植えに続き、稲刈り体験が身近で出来る環境です。カエルが無数にいたなあ。 新米はとても美味しい✨

互いの歩み寄りが、移住者を受け入れる上で必要だと理解する地元農家の自治会長さん

時は流れ、田植えの頃の上記の話から、あっという間に稲刈りシーズンになりました。 

米農家の自治会長さんのご自宅(自治会ポスト)へ行くと、たまたま会長さんと居合わせました。 すぐ横の畑に稲刈り後の籾殻が山となっており、「これが問題になってた籾殻、うちの畑にもこんなにある」と。 籾殻は燃やすことで害虫駆除、また灰が肥料となり土壌改良の効果があるそうです。 

「この辺りでは当たり前だし、まだ隣近所も似たような環境だから認識は遅いけど、移住者を積極的に受け入れている町である以上は、理解を示して時代と共に変わっていくことも必要だと思う」 と仰っていました。 懐が深い・・・。  

そして稲刈り後の自治会長会議で話題が再浮上

新興地の自治会長さんは、ご家族に健康被害が出たとのことで「やめるべきものだ」というご意見はさらに確固としていました。 でも以前のように強気なまま農家と直接言い合うのではなく、その農家さんと昔から知合う仲の、別の自治会長さんに仲介を頼むことにしたそうです。 そうして、農家さん側には「時代の変化」「昨今では健康被害になり得ること」を理解していただき、まずは第一歩と良い話合いになったそうです。

しかしやはり、 「農作業を行う上で、ほんの一時的なものだ。 昔から続いているその土地の文化、風物詩のようなものだと認められないのか?」 という、それはそれで、多くの人たちにとって簡単には消えないであろう、大事なご意見もありました。 

そこは実際に米農家である会長さんが、上記の話(移住者を受け入れる町…)をして、認識は時代に合わせて少しずつ変えていくことも必要だと促すことで、議論は落ち着きました。 籾殻をすき込むことは、籾殻の性質上、腐食が遅く土壌に悪いので、乾く前に行う必要があるのでは…など、その解決の難しさは、改めて説明されていました。

 異論や価値観の違いを受けいれ、理解する姿勢を示そう。同じ町民としてより良くしていこう…という共通認識が見えました。 地元の人達と移住者が歩み寄るのを目の当たりにした貴重な自治会長会議場でした。 以下、余談です。

花粉症もなぜ現代で増えているのかを考えると、結局、ヒトの環境破壊問題

 籾殻を燃やすことで近隣住民に服薬が必要になるほどの健康被害をもたらした。 この事実を訴えられた以上、移住者を積極的に受け入れる町の意識が「風物詩だから我慢しろ」ではやや横暴に聞こえます。 

 現代はもう、ヒトが化学物質を大量利用して少しずつ空気を汚しているせいで、籾殻の煙と一緒に、大気中に浮遊する様々な化学物質が混じるようになってしまいました。 大陸からの大気汚染問題で、PM2.5(微小粒子状物質)が空気中に混じっている…など、今後花粉症の時季にまた聞こえてくることでしょう。 

花粉症が現代で増えている一因と同じで、昔と変わらない行為をしているのに、与える影響は変わってしまっています。 空気が昔と同じように綺麗なままだったら、花粉症も気管支炎も、もしかしたらコロナも、ここまで増えていないかもしれません。 

 これはどちらか一方に100%偏ってしまうことが難しい問題… 農家への理解に加え対応策も講じてあり、多くを模索したんだなぁと思われる自治体がありました。 ➡下諏訪町 野焼きの禁止ページ 

 要は、農家は籾殻などを焼却する場合があるので、ご理解くださいという米農家ではない住民側へ、また農家側には風向きなど注意してなるべく焼却に寄らない方法があればそうしてください、という両面に向けたお願いです。 尚且つ農家側に向け、もしそうした気遣いや処理に困るならこちらで回収もしますよ・・・という施策のご案内です。 さすが移住先として常に関心を集める長野県で、こうした行政の対応策までは田んぼが多い神奈川県西部でも明記されていません。 

ここ開成町や近隣の市町も、農業に関すること等は例外(だが苦情があった場合などは止めてください)として野焼きを禁止する内容をウェブ上に掲載されています。➡開成町の野焼きに関する注意文書

背景や現状など丁寧に見聞きしていくと自ずと諏訪町のような対策、表記に至るのかもしれません。

参考 環境省「PM2.5と野焼き行為との関連について」